文部科学省 科学研究費補助金

領域の目的

発生や老化の過程で不要となった細胞や生体にとって有害な細胞は、細胞死により排除される。これまで細胞死は、細胞の一生の最終過程であり、生じた死細胞は単に捨て去られる存在であると考えられてきた。ところが近年、この死細胞が実は情報の発信源となり、免疫応答、炎症、修復、再生、線維化といった生体応答の起点となっていることが明らかになりつつある。
さらに、これらの生体応答の起点となる細胞死には複数のプログラムが存在することが分かってきた。多細胞生物の生理的・病理的現象においては、これら複数の細胞死が補完的にあるいは同時進行的に起きていると考えられ、それぞれの細胞死が起点となる生体応答カスケードを解明することにより、細胞死に伴う生命現象の包括的な理解が可能になると考えられる。
このような背景のもと本領域では、死細胞が発信するメッセージとその役割の解明を通して、“生命情報発信体としての死細胞”という新たなパラダイムの構築を目指す。