【領域概念図】
【領域の目的】
発生や老化の過程で不要となった細胞や生体にとって有害な細胞は、細胞死により排除される。これまで細胞死は、細胞の一生の最終過程であり、生じた死細胞は単に捨て去られる存在であると考えられてきた。ところが近年、この死細胞が実は情報の発信源となり、免疫応答、炎症、修復、再生、線維化といった生体応答の起点となっていることが明らかになりつつある。
さらに、これらの生体応答の起点となる細胞死には複数のプログラムが存在することが分かってきた。多細胞生物の生理的・病理的現象においては、これら複数の細胞死が補完的にあるいは同時進行的に起きていると考えられ、それぞれの細胞死が起点となる生体応答カスケードを解明することにより、細胞死に伴う生命現象の包括的な理解が可能になると考えられる。
このような背景のもと本領域では、死細胞が発信するメッセージとその役割の解明を通して、“生命情報発信体としての死細胞”という新たなパラダイムの構築を目指す。
【領域の内容】
本領域では細胞死の分子機構と、それらを起点として惹起される生体応答を解析し、それぞれの細胞死が担う生理的・病理的役割を明らかにすることを目指す。具体的に、
1.種々の細胞死実行機構を分子レベルで明らかにするとともに、検出法やイメージング技術の開発により、各細胞死が、生体内のどのような生理的・病理的状況で起きるのかを明らかにする。
2.それぞれの死細胞が発信するメッセージの分子基盤と、それにより起こる生体応答を、死細胞処理、免疫応答、炎症、修復、再生の観点から解明する。
領域内では、各計画研究班が互いに相補・協調しながら研究を進めると同時に、領域内で1つの組織傷害モデルを取り上げ、細胞死機構、死細胞処理、炎症、修復、再生研究を専門とする領域メンバーが、各々の立場から素過程を解析し、得られた知見を統合することを試みる。これらの取り組みにより、「細胞の死それ自身だけでなく、死細胞が発信する情報が生体応答を規定する」というコンセプトを確立し、死細胞が多細胞コミュニティーの制御とその破綻にどのように関わるのかを包括的に解明する。
【期待される成果と意義】
組織傷害に伴う免疫応答や炎症、修復、再生といった現象は、細胞死が契機となって生体応答カスケードが進行すると考えられる。本領域の推進により、死細胞が発信するメッセージの役割の解明が進むことで、これら生体応答の共通原理の解明が期待できる。さらに、この共通原理は、様々な疾患の病理にも深く関与していると想定されることから、将来的な医学医療への応用として、死細胞が発信するメッセージを標的とした創薬や、これらメッセージを利用した疾患バイオマーカーの開発につながる成果が期待できる。
組織傷害に伴う免疫応答や炎症、修復、再生といった現象は、細胞死が契機となって生体応答カスケードが進行すると考えられる。本領域の推進により、死細胞が発信するメッセージの役割の解明が進むことで、これら生体応答の共通原理の解明が期待できる。さらに、この共通原理は、様々な疾患の病理にも深く関与していると想定されることから、将来的な医学医療への応用として、死細胞が発信するメッセージを標的とした創薬や、これらメッセージを利用した疾患バイオマーカーの開発につながる成果が期待できる。